伝統産業を守り継ぐ「堺刃物」の研ぎ職人「森本刃物製作所」森本 光一さん(堺北)
2017.08.01
荒研から仕上げまで伝統工芸士として活躍
堺の刃物づくりは、鍛冶(かじ)=鍛造(たんぞう)と、刃付と研磨の両部門が完全に分業しているのが特色です。
業務用包丁の割合が高く、全国の約90%以上のシェアーを誇っています。プロ仕様は、家庭用の、機械による鈍角の刃付け(標準刃付け)とは違い、使用目的に合った本刃付けをして、職人さんの用途に適合した包丁として重宝されています。研磨の伝統工芸士である森本さんは、荒砥から仕上げまでの27工程をすべて、手作業で砥石に当て研いでいます。
以前は日本伝統工芸士会の役員をつとめていました。日本各地の伝統産業の地域に出向き、また他の業界の職人さんと交流することで視野も広がり、他の刃物の産地も訪れ、堺との違いや特色を見つめなおし、堺刃物の業界発展に尽力してきました。
地域の活性化と後継者育成
堺市では、(公財)堺市産業振興センターと堺刃物商工業協同組合連合会が連携して、堺市の伝統産業である刃物職人を育成するために、伝統産業後継者育成事業として、刃物製造の基礎と実技を1年かけて学習、受講料は無料で、実技研修中は月10万円の奨励金が支払われる「堺刃物職人養成道場」を実施して、製造量の増加を目指しています。
森本さんは、忙しい仕事の合間を縫って、堺工科高校機械技術専科の定時制と全日制の生徒さんに水砥石(包丁職人も使用している荒研ぎする機械)の技術の実習を2時間半、週2回、指導をされ10年が経ちます。伝統産業後継者育成に寄与すればとの想いから、実習体験などを通して「ものづくり」の楽しさを理解してもらえるよう、全力を尽くしています。
伸び盛りの若者を教えていて、入学時と卒業時に成長して人間が変わってくるのを見ると職人冥利につきます。