2024.06.08
大阪商工団体連合会(大商連)は6月5日、インボイス制度の影響調査アンケートの集計報告と、同制度中止を求める記者会見を大阪府庁で開きました。同アンケート(詳しくはコチラ)は、今年3月末までの4ヵ月にわたり、班会や学習会、商店訪問などで対面により大阪府下の自営業者2819人から集めたもの。
〇調査からみえる負担増の実態
藤川会長が冒頭あいさつし、事務局が調査結果をパネルを使って報告しました。それによると、インボイス登録したうち、これまで免税業者だった者は905人・66.9%で、うち72.8%が「取引先やお客に求められたから」と答え、取引上の力関係から登録せざるを得なかったことがうかがえます。登録したことで「消費税の負担が発生する」60.2%、「制度が複雑でよくわからない」50.9%、「事務作業や費用の負担が大きい」32.3%と回答し、免税から課税になった負担は非常に重い状況です。
税負担をどうするかの質問では、免税だったがインボイス登録した者のうち「値上げする・取引先に負担を求める」22.6%に対し、「自分の利益や貯金などを削って払う」50.4%と倍以上に。さらに9.5%が「廃業する・廃業を検討している」と答え、インボイス制度が倒産・廃業を加速させています。
インボイス登録しない業者では、「取引がなくなった・減らされた」「単価を下げられた・消費税分を下げられた」が合計11.2%にのぼり、下請法などの規制を受けないよう黙って取引から排除する「サイレント取引排除」と考えられる事例もありました。自由記述欄にも切実なコメントが多数寄せられ、集計結果とともに紹介しました(別欄参照)。
〇インボイス制度に板挟み「もう廃業するしかない」
3名の当事者が実態告発しました。建築美装のHさんは下請けの立場から発言。「以前に課税業者だったときは貯金を取り崩して納税していた。数年前に売上が下がって免税業者になったときはホッとしたのに、インボイスのせいでまた課税業者に。ゼネコンから明言はなかったが登録しないと仕事が来なくなるため、やむを得ず登録した。この仕事を続けていきたいので、インボイスは廃止してほしい」と訴えました。
大工工事のAさんは「昨年8月に上請けから要求され登録せざるをえなかった。単価引き上げも下請けに負担を求めることもできず、消費税分を自社で被ることに。2月決算では、昨年10月からの5ヵ月間で消費税額が30万増え、来年はおよそ80万円になり、もう廃業するしかない」と板挟みで苦しい状況を語りました。
事務機器リースのNさんは「ファイナンス会社から消費税分を勝手に値引きされて入金されるようになった。また、見積に新規分と残債分を分けて記載するように言われたり、客先から『1つの契約なのに明細が2つ届いている』と不信感を持たれたりと、仕事がしにくくなっている」と一方的な値引きや客先とのトラブルについて実態を話しました。
〇インボイス強要など違法まん延 公取は放置
民主法律協会・独禁法研究会の弁護士2名が、集計結果への見解をコメント。「消費税収が上がっているが、経済が活発化したのではなく搾り取っての税収であり、苦しいところに負担を押しつけている実態がよく分かる、非常に貴重な調査ではないか」「公正取引委員会は、インボイス登録の強要は独禁法または下請法上『問題がある恐れがあります』と示しているが、本気で食い止める意思が全然感じられない」「これだけ廃業を選択する方が出ているのは衝撃で、経過措置がなくなるとさらに追い込まれる人が増えるだろう」などと指摘し、「このままインボイスを続けていいのか考え直すべき」と中止を求めました。
藤川会長が再度発言し、「私たちは消費税が小規模業者に重くのしかかる不公平税制であることを長年訴えてきたが、このアンケート調査からもインボイス廃止の声がどんどんあがっている。メディアでもどんどん知らせてほしい」と述べ、まとめのあいさつとしました。記者会見には、共同通信、毎日、朝日、産経、NHK、赤旗の6社が取材に訪れました。
*自由記述欄より
・サービス・30代「インボイス登録をしたが、どうしていいのか分からず泣き寝入り。収入と生活支出の収支バランスがおかしい。生活できているのが不思議。親にたくさん助けてもらわないと厳しいです。」
・建設・60代「物価高騰などで家庭への負担が増し、その上インボイスが始まり、さらに家計に負担がかかっている。一人親方・個人事業に追い打ちが来ている。」
・運送・50代「得意先から消費税分減額されて支払われることになって、収入が減ってしんどくなった。」
・その他・40代「だまって取引を停止された。物価高騰の為、節約しようとしてしわ寄せが来ている。」
・料飲・年代不明「国会議員は領収書なしでも認められるのに、なんで我々はきっちり揃えんと認められんのや。」
・運送・60代「国も自治体も、もっともっと底辺のことを深刻に考えてほしい。月15万円で生活できるか体験してほしい。」