2018.03.20
近年、国民健康保険料(税)や住民税などの地方税を滞納してしまう人が増えています。
滞納の原因は、高すぎる国保料にあります。
大阪市の場合、所得300万円・40代夫婦と子ども2人の世帯だと年間55万2118円もの金額になります(2017年度)。多くのサラリーマン層が加入する協会けんぽや、公務員の共済組合と比べると、保険料の負担は2倍以上となっています。国保料が高すぎるため、払いたくても払えないのが実態です。
にもかかわらず、役所による不当・過酷な取り立てが横行しています。
大阪でも先日、3人の子どもを育てながら看護師として働いているシングルマザーの方に対し、とある市役所が給料を口座ごと全額差し押さえるという事件が発生しています。
法律では、給料の全額差し押さえは禁止されています。これは所得税などの国税だけでなく、住民税などの地方税、国保料や介護保険料なども同様です。(国税徴収法76条1項、国税徴収法施行令34条)
滞納者本人のみの場合で1か月あたり10万円は差押えが禁止され、生計を一にする家族が1人増えるごとに差押え禁止額も4万5千円ずつ加算される制度となっています。
ところが、多くの役所は、「預金口座に振り込まれると、差押え禁止財産かどうか見分けがつかなくなる」という最高裁の判例(1998年2月10日)を根拠として、「預金口座の差押え自体は違法ではない」と脱法的に差押えを行っています。
この度、前橋市がこれまで行ってきた給与の全額差し押さえについて、1月31日に前橋地裁で「違法」と断罪されました。
原告は、過去の事業の失敗が原因で多重債務に陥った方です。国保税と市民税を滞納してしまい、毎月1万円ずつの分納を5年近く続けてきましたが、市の担当者は突然「毎月2万円払う」ことを要求。原告が「生計が成り立たない」、「毎月1万5千円なら払える」と申し出ましたが、担当者は「話にならない」とまったく取り合いませんでした。その後、前橋市は数度にわたり、月末の給料日が来るたびに口座を差押えました。
こうした前橋市による不当な差押えについて、給料の入金日を狙って差押えを行ってきたことや、入金直前には口座の残高がごくわずかだったことから、前橋地裁は「差押え禁止財産である給与を差し押さえたもの」と判断。市の行為を「違法」と断罪し、12万6226円の返還と慰謝料請求の一部支払いを命じました。
この判決を勝ち取った背景には、前橋民商も参加している「市税を考える市民の会」による抗議行動や裁判支援などの運動がありました。
各地の民商では、役所に対して「不当・強権的な差し押さえは中止を」といった申し入れや交渉、高すぎる国保料の引き下げ署名などに取り組んでいます。
高すぎる国保、不当な取り立て、滞納の相談は民商へ